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知っておきたい相続の知識 ②相続の承認と放棄
「家計のホームドクター®」、ファイナンシャルプランナーの高村です。
誰もが生涯に一度は遭遇する相続問題。
相続と言われると『難しい』『分かりにくい』といった印象を持った人が多いと思います。しかし相続は突然訪れます。
いざその時になったらどうすればいいのか?
今回は知っておきたい相続の基礎知識の2回目、「承認と放棄」についてお話させていただきます。
相続が発生した時の3つの選択肢
父親が亡くなり遺産の整理をしていたら、多額の借金があることが判明した・・・。
こんな話は比較的よくある話です。もしもあなたが当事者になったらどうしますか?
被相続人の遺産にはプラスの財産だけでなく、借金などの債務(マイナスの財産)もあります。相続人はその両方を引き継ぐ権利・義務がありますが、多額の借金(マイナス財産)を相続した場合、その後の生活が脅かされてしまう可能性も出てきます。
そこで法律では、相続が発生した時に相続人に次の3つの選択肢を定めています。
亡くなった人の借金は相続しなくてもいいの?
相続をするかしないかは、相続人が自由に選ぶことができます。
その3つの選択肢とは、
➀単純承認
一切の財産を相続する方法。
プラスの財産はもちろん借金等のマイナス財産も全て引き継ぎます。
②限定承認
プラスの財産の範囲内で、マイナスの財産を相続する方法。
相続財産の範囲内で借金等の債務を清算し、もし財産が残ったら相続します。
どんなに債務が大きくても相続財産を超えて弁済する必要がありません。
③相続放棄
一切の財産を放棄して、相続をしない方法。
明らかにマイナス財産(借金等の債務)の方が多いときや、被相続人が連帯保証をしている場合は相続放棄が賢明でしょう。
限定承認や相続放棄をするためには、相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に家庭裁判所で所定の手続きをすることが必要です。
この期間を過ぎると自動的に単純承認したことになってしまいますので、注意してください。また限定承認は相続人全員の合意が必要になり、また手続きも煩雑ですので、弁護士などの専門家に依頼するといいでしょう。
相続放棄のデメリット
相続放棄には借金を引き継がなくてもいいというメリットの一方で、次のデメリットがあります。特に③は注意が必要です。手続きをする前に必ず確認しましょう。
➀一度相続放棄をすると撤回することができない。
②マイナス財産だけでなくプラスの財産があったとしても、一切相続をすることができない。
ただし、生命保険については相続財産ではない(みなし相続財産といいます)ため、相続放棄をしても受取人固有の権利として受け取ることができます。
③相続を放棄することで新たな相続人が出てくる。
例えば、上図のような親族関係で夫が多額の借金を残し亡くなりました。その後、妻と子は返済不可能だと判断し相続放棄をします。
この場合の相続人は妻と子です。相続放棄をしたことによって相続が終了するのでしょうか?実は次の相続順位である父・母に相続権が移るということになるのです。
妻と子が相続放棄をした為に、相続人が変わってしまうのです。更に父・母が相続放棄をすると兄が相続人になります。時と場合によって、兄は自分の知らないうちに多額の借金を相続せざるを得ないという状況に追い込まれてしまうのです。
相続放棄をする場合には、親族間で話し合いをしっかりと行ってください。メリット・デメリットをきちんと理解してから手続きをしてください。
親族を思わぬトラブルに巻き込んでしまいかねません。
今回のまとめ
多額の借金をしている方や、誰かの連帯保証人になっていた方が亡くなられた場合、遺族は途方に暮れてしまいます。
そんな想像を絶するような困難な状況に陥った場合に、相続人がその借金を引き継がなくてもいいように、『相続放棄』という権利が認められています。
もしこのことを知っていたら・・・。
ちょっとした知識で様々なトラブルを避けられるかもしれません。
何か分からないことがあったら私どもファイナンシャルプランナーに相談してください。問題解決の糸口になるお手伝いをしていきます。
次回も引き続き、相続の基礎知識 ③『養子縁組』について書いていきます。